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無意識のデータベース
2024 May / 17 Fri ×
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2003 October / 23 Thu ×
下宿の木造アパートは玄関のスグ脇にある。
築30年から50年の古い建物で動乱の時代もココにあったんだろう、と思う。

部屋は誰かのお下がりらしくて
誰かが置いていったもので溢れていた。
…部屋の奥にトイレの入り口のような扉がある。
開けてみたらそこは。
どこかのオフィス。
しかも誰もいない、伽藍堂。

オフィスビルの中だということはすぐわかった、
入ってすぐは倉庫のようで雑に物が散らばっているが人の気配がしない。
その区画を抜けて、更に奥にすすむ、別の区画、
…やはりヒトの気配がしない、
誰もいないのが気味が悪い。
入ってきて右に曲がって左に曲がって受付カウンターのようなところを通り過ぎる、
ぽっかり大回廊のじみたゴシック風の装飾の廊下に出た。

その向こう、光が差し込んでいるロビーが見える。

…行ってみる前に一度外に出よう、そう思った。
この先はアヤシイ。
外、というか戻って、木造アパートの外に出た。

トイレのドアに見えたそれは異世界を通じて外につながっていたんだ、
っていうことを悟る。

管理人が電気ポットを持って現れた。
今の現象を話すと血相を変えた。
定刻に決められたことをしないとこの異世界に閉じ込められることになる、
と教えられる。

外にでた、と思っていたそこは確かに外なのだが、
ワタシ自身が異次元からその場所にいることになっている。

これは時間とタイミングのゲームだ、と思った。

しかも仕掛けているゲームマスターがいる、と察する。

さっきのドアをもう一度開ける、
同じ入り口、雑多な荷物置き場、ロッカーのある倉庫、
右に曲がって、左に曲がる、
そして戻る、

あれ?

ここどこ?

1回目と景色が違う、
管理人のおじさんは電気ポットを持ったまま付いてきている。
一緒に出てきた寮に住まう若い男子学生も着いてきていた。
(おっとり系のおぼっちゃんにみえる)
管理人はしまった、という顔をした。
ワタシ達はまんまと罠にかかって閉じ込められてしまったらしい。
リノリウム板のひっそりしたオフィスビル、開け放たれたパーテーション、
床が異様に市松模様、まるでツインピークスの最終話の夢のよう。

何度も何度も元来た道順をなぞってみたが元の区画には戻れない、
ロッカールームの先に書類の散らばった部屋があった。
広いテーブルがでん、と置いてあって、
窓際にデスク、壁にはFAX、コピー機などなど。
…扇チカゲに似たスーツ姿の管理者が現れた。
スーツ姿の彼女はこっちの世界の住人らしい。

アパートの管理人が彼女に事情を話した。
彼女はこっちの世界の住人といえどワタシたちの味方らしい。
時間になるとこの無人ビルに急に営業マンたちが現れた。
スーツの彼女が配る担当リストを奪い合うように受け取っていく、
それはまるで群がる餓鬼を思わせた。

…きっと、ここは、天国か地獄か、そういうところだろう、と思う。

そういう"鬼"が支配する空間で、
彼らは亡者のようだ、
喧騒が一旦収まり、また静寂が訪れた。
スーツの彼女を囲んでワタシたちはどうやって元に戻るかを話し合う。

時間はこっちの世界で軸で進み出してしまったのだ。




目指す先にその部屋があるはずだった。
長い片廊下に並ぶドアの向こうは教室のようだ、
急に赤黒い風が吹いたかと思うと、
隔壁が閉まってくる、
ワタシ達は見つかった恐さで後ずさりした、
ブロックの間隔はわかる、
約5m間隔で廊下は隔壁に区切られた。
1つのブロックにみな閉じ込められた。
残っていたのは事務職風のオネーサンたち2,3人、
ワタシ、おじさん、フジイさん。

…考えていた。

定刻に×××をしなければいけないルールがある。
だったらその時間まで動けない、
なら、このままここで円陣を組んで時間が巡ってくるまで休もう、
そう考えた。
その提案に誰もが納得した。
決められた順序がある、それもルールなのか、
円陣を組んだ。
"定刻"はいつやってくるかわからないが、決められているこのかたちの円陣を組んでいれば、
解除スイッチが入るはずだ、と考えた。
いわば特別ルールのようなものだ。
その時間が来るまで非常電灯の灯りのなか、暗い隔壁の空間で過ごした。
食事したり眠ってみたり。

明るくなった。
イキナリ覚醒、解けたんだ、と急ぐ、急がないと間に合わない。
廊下を走って地下の操車場に向かった。

地下の操車場は、
空間の広さは石造りの古い大きな駅舎を思わせるが
岩肌がむき出しで、ここが地下ではないかと思わせる。
時間だからごった返していた。
出勤する人々が急ぎ足で自分の乗る目的の列車へ向かっている。

ゲートの入り口に立っている制服が2人いる。
ワタシの傍らの老紳士が訊ねたのは別の乗り物のチケットだった。
例えば各駅停車ではなく、くつろげる広さがある一等客席を積んだ特急のこと。
制服たちはいわゆるダフ屋にもなれる輩で
電車のチケットを売っている、

×××の方が安いことを知っていれば
彼らの売るチケットがいかにボッたくりかすぐわかるのだが。

ダフ屋に囲まれながら駅員らしい制服のじいさんに
目的の列車の発車時間とホーム番号を訊いた。
ダフ屋は散っていく。
"定刻"までに急がないとまた仕掛けが働いてしまう、と焦る。
ダフ屋たちはエージェントのような者たちで
ワタシの発言でワタシ達の行動の目的がバレてしまった。
裏をかいたことになればいいが、と手段がまだいくつか残されていることを思う。


ホームは人造の肉腫のような岩壁で終点か起点の駅らしく
列車は格納庫に納まった状態でいた。
列車に群がる群衆を尻目にホームの脇の壁にあった細い業務用のような階段を駆け上がる。
1列にならないと通れないような裏口だ。
ホームの1つ上の階層にたどり着くと今度は到着ホームだった。

早くこの地下鉄の駅から出なければ、と思う。

時刻はサラリーマンの通勤時間と重なっていて進むのもままならないほど人がいる。
焦っていた。
出口はどこだ、
地上への出口。


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