御大層なﾋﾞﾙの一室に、社長室のような事務所で、
私と彼女は揉めていて、
その弾みかなにか、高■よが頭を強打して、
事務所は奥の所長机と、手前に応接ｾｯﾄがあって、
応接ｾｯﾄの大理石のﾃｰﾌﾞﾙに頭を打ったらしい、
死んでいた。
揉めていた彼女は、私の所為にして「（公の場に）云う」という、
■よは、私の過去の殺人の話も聞いている、
殺人は初めてじゃないから…
彼女のｹｰﾀｲと、私のｹｰﾀｲ、ｱﾘﾊﾞｲ的には、絶対ﾊﾞﾚない状況だった。

■よの肉は、一塊、残った。
冷蔵庫に入りきらなかったそれは、心臓の形をしてた。
その事務所はﾂ■■議員の政治事務所で、ﾋﾞﾙの10階にある。
このﾋﾞﾙはそういう、事務所ばかりが入ったﾋﾞﾙだ。
奥の所長机の隣の大型冷蔵庫を開けて、
半分腐った肉の塊と一緒に■よの肉片もﾋﾟﾆｰﾙ袋に包んでいれた。
冷蔵庫は、肉の他にもｲｯﾊﾟｲで、ﾄﾞｱはなかなか閉まりきらなかった。
事務所には私しか残っていなくて、
ﾄｲﾚに行きたくて、事務所を出て、10階のﾛﾋﾞｰに行った。
ﾛﾋﾞｰには人があふれていて、喫煙している人、お喋りしている人、
そういえば靴を履いていなくて…
ﾛﾋﾞｰの椅子の下にVANSのｼｭｰｽﾞがあった。
仕事の時は黒のﾊﾟﾝﾌﾟｽだが、後は帰るだけだからこれでいいや、と思って履いた。
自分の灰皿の吸い殻を、女子ﾄｲﾚのなかにある吸い殻入れに捨てて、
…いや、灰皿も洗った方がいいか？と考え直して。

ﾋﾞﾙの外、真っ直ぐ伸びる幹線道路を歩いた。
時間は昼の2時ごろ、寒々とした弱い陽射し、12月の気候だった。
事務所はどうなるんだろう？
ﾂ■さんが鍵を持っているが、(この不祥事のさなかだから)引き払うんだろうか？
冷蔵庫の中身はどうなるんだろう？
第一秘書のﾒｶﾞﾈの女性が持ち込んだ鍋の材料なんかも…
業者が始末するのかしら？人肉だってこと、ﾊﾞﾚないかしら？
…せっかく仕事が見つかったのにこの体たらくじゃなぁ…。
そうだ、■よは聞いちゃったんだよね、そして2人目。
殺人者じゃん、私。

もう引き返せない、
過去はぬぐえない、
暗いｶﾀﾏﾘに蔽い尽くされるように、

気が付くとﾕ■ﾁ、ﾕ■ﾁ、ﾕ■ﾁ、と呟いていた。
この後に及んで…人殺し、なのにあのﾕ■ﾁが助けてくれるはずもない。
道は、大きなT字路になっている。
今歩いてきた道がどん詰まりでまた幹線道路にぶつかっているのだ。
右手に渡って、向うに見える田園風景を見ながら、
…(自分の症状は)よくなりつつあると思っていたのに…
こんなはずじゃなかったのに…