久しぶりに会ったﾑﾗｾは(会社)周辺の地図を見せた。
地図は初期の3Dのﾎﾟﾘﾎﾟﾘした具合の簡単な立体図で、
ﾋﾞﾙに囲まれた一画に昔乍らの町が点在していてその中に小さなﾁｬﾍﾟﾙがあることを教えてくれた。
だけど丁度ﾋﾞﾙの陰になっていて見えないよ…
ﾑﾗｾは相変わらずだったから、ありがとうありがとうと何度も言って抱きついた。


複合商店ﾋﾞﾙの何階か、
ｶﾌｪﾃﾗｽとｶﾗｵｹﾌﾞｰｽが同居してる店内で、僕はｶﾌｪの方でｶﾄｳさん？とお茶していた。
後ろのｶﾗｵｹ軍団はｲｲｶﾝｼﾞで盛り上がっているようで、ｻｸﾗがﾏｲｸを持った。
流行の歌を歌う。
声はｻｸﾗだけど…なんかﾌﾂｰだったからがっかりした。

僕らのﾃｰﾌﾞﾙはその喧燥をよそに静かになって、
人気のなくなったｶﾞｯｺの食堂にいるようだった。
ｶﾄｳさんとｶﾅｺとｱﾂｼのあっちゃん、帰り、どーする？
どこかに一泊は確定だ、あっちゃん以外は帰れない。
飛騨地方にすむあっちゃんに他3人で黄色い声で「家に泊めてー(はぁと)」とゆってみる。
…寮の部屋に上京してきたあっちゃんﾏﾏを回想する…
泊めてくれるかなぁ?
外面はよさそうだけどあっちゃんﾏﾏ。でも男の子のﾏﾏだからなぁ。
飛騨地方に一泊したあと、早朝に出れば東京に朝方着くからﾉｰﾌﾟﾛﾌﾞﾚﾑ!
（＊実際は違います：たぶん）
周遊券の路線図を見せて話しは決まった。
周遊券は運行区間が書いてある36枚綴りの切符、それと青春18切符が2ｼｰﾄ。
有効期限が近いなぁ、そう言えばもう切れちゃうなぁ、
しみじみしてても仕方ないので出発しよう、
と、僕は教室の片隅の自分のﾌﾞｰｽに行きﾃﾞｻﾞｲﾝ用具を鞄に詰めた。
そうだ、また戻ってくるんだから必要なものだけ持っていこう、
そう思い直して一度鞄に入れたﾄﾞﾗﾌﾃｨﾝｸﾞﾃｰﾌﾟ3種類を元に戻した。
道具箱の引き出しを開けて必要なものを捜す…
…課題で使った幾何学系の紙切れがごっそり入った引き出し１。空の引き出し２。

手間取ったのでみんなにおいていかれる、と、焦った。


ﾑﾗｾに貰った地図の範囲の中にある下町を歩いてた。
小さな神社があった。
その前にみんながいた。
こーゆーもんだよ神社の敷地って、と、しゃべりはじめたあっちゃんの頭には何か浮かんでいるらしい。
教科書の図？建築史の図版？それとも経験？
長方形の敷地が石垣に囲まれているその神社、高櫓の鐘楼堂、入口の3,4段の石段を登ってあっちゃんは喋ってる。
僕らの数名の集団の中にｱｼﾞｱ系外国人の女性がいて、彼女は誰かを捜していた。
彼女の捜しているのはどうやら裏社会に潜り込んでしまった人のようだったので、
その辺は土地ｶﾝのあるあっちゃんに任すしかない…

商店街の一画にある一見ｵｼｬﾚなｶﾌｪﾊﾞｰ、昼間だから開店前の準備中っぽいけど…？
頭からｼｮｰﾙを被った女性は口に指を当てて僕らに合図し、
心配そうな顔になった僕らを尻目に中に入る。
入れ替わるように中からひとり出てきた、
と、思ったらｿﾞﾛｿﾞﾛ出てきた。建物の中に不審なものがあるとかないとか…
その非社会的組織の彼らの中にあっちゃんの幼なじみがいて、
あっちゃんは彼に何がどうしたのか訊ねていた。組長とあの女性がまだ中にいるようだ…
…”あの女誰なんだ？ｶﾝｹｰないのに巻き込まれちまって”
…みたいなことをﾐﾝﾅ口にしている。不審物と彼女は関係あるはずもないし、
それはｱﾀﾘなんだけど、彼女は別にｵｷｬｸｻﾏではないよ…とちょっぴりおかしかった。

ﾜﾀｼの傍にｲﾛｲﾛきいてきたあっちゃんが戻ってきた。
後ろからあっちゃんを呼ぶ声がした。
その建物の道を挟んだ丁度対面に奇術屋がある。
そこの店主だった。この町の主でもある。
その老人はｶﾀｷﾞでない女はつれて歩くな、とﾜﾀｼのことを云う。
なに云っちゃってんの、ｶﾀｷﾞだってば！
奇術屋のｶｳﾝﾀｰの中にまで入って店主に詰め寄ったﾜﾀｼ。
奇術屋はまるでﾓｸﾞﾗの生活をしてきたかのように目は退化していて小さく、
それをｶﾊﾞｰするように黒ﾒｶﾞﾈをかけている。
口の中に見えた歯はｸｽﾘか何かのﾔﾘｽｷﾞで溶けたものかと思うほど小さい。
ﾜﾀｼがｶﾀｷﾞだと言い寄ったのを哄笑した大口の中には舌からも歯が生えていて、歯は円を描こうとしている。
魚類の二重に歯が生えるのが失敗したもののようになっていた。
むくれるﾜﾀｼをよそに、ｵｷｬｸに対して商売を始めた。
奇術屋の中は湿気たｻ店になっていて、普段はｵﾘｼﾞﾅﾙの奇術具でつくるかき氷やｿﾌﾄｸﾘｰﾑを売っているらしい。
…なんだか、この態度は、奇術屋に気に入られているようだ。
ｶﾀｷﾞじゃないからか…。